勇気を出して直属の上司に退職の意思を伝え、何度かの面談や調整を経て、ようやく退職日が決まった。
本来なら、長年抱えてきたモヤモヤから解放されて、ホッと一息つけるタイミングです。しかし、実際に会社を去る日までは、「職場での気まずさに耐えられるだろうか」「周りの目が気になって、毎朝会社に行くのがつらい」と、新たなストレスを感じる人も少なくありません。
これまで普通に会話していた同僚が急によそよそしくなったり、上司の態度が事務的になったりすると、職場にいること自体が苦痛に感じられることもあるでしょう。
「早くこの環境から抜け出したい」と、時計ばかり気にしながら過ごしている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、人事歴10年以上の視点から、退職が決まってから最終出社日や有給消化を迎えるまでの気まずい期間を乗り切るコツを解説します。周囲との接し方や引き継ぎの進め方、退職を引き止められた場合の対応、どうしても出社がつらいときの対処法も紹介します。
退職を伝えたあと、出社が気まずいときの対処法
退職を伝えたあと、職場の雰囲気が変わったように感じても、無理に周囲の機嫌を取る必要はありません。まずは、次の4つを意識してみましょう。
- 引き継ぎに集中する: 担当業務や進行中の案件を整理し、退職日までに必要な対応を進める。
- 挨拶と業務連絡は普段どおりにする: 無理に雑談を盛り上げず、必要なコミュニケーションを丁寧に続ける。
- 周囲の反応を深読みしすぎない: 相手の態度だけで、自分が責められていると決めつけない。
- 有給休暇や相談先を確認する: 出社がつらい場合は、休暇の取得や人事・公的相談窓口への相談も検討する。
退職日までに大切なのは、周囲全員に納得してもらうことではなく、必要な引き継ぎを進めながら、自分の心身を守ることです。
なぜ、退職が決まったあとの職場は気まずくなるのか?
退職の意思を正式に伝えた途端、職場の空気が変わったように感じることがあります。
自分としては、今後のキャリアや働き方を考えたうえで決断した退職でも、残る上司や同僚にとっては、業務や人員配置を見直すきっかけになるからです。
例えば、次のような事情が考えられます。
- 業務負担が増えることへの不安: 退職者が担当していた仕事を誰が引き継ぐのか、残ったメンバーの負担が増えるのではないかと心配になる。
- 自分だけが取り残されるような感覚: 自分も今の職場を辞めたいと思っている人は、先に退職を決めた人をうらやましく感じたり、複雑な気持ちになったりすることがある。
- チームの変化への戸惑い: 一緒に働いてきたメンバーが抜けることで、業務の進め方や人間関係が変わることに不安を感じる。
こうした事情が、そっけない態度やよそよそしい雰囲気につながっている可能性はあります。
ただし、周囲の態度が変わったように見えても、その理由が必ずしもあなたへの不満や悪意だとは限りません。業務の調整で余裕がなかったり、どのように接すればよいか戸惑っていたりする場合もあります。
相手の気持ちをすべて理解しようとすると、かえって疲れてしまいます。
「退職によって職場にも変化が生じているのだろう」と一歩引いて考え、必要以上に自分を責めないようにしましょう。
気まずい期間を乗り切るための4つのコツ
退職日までの期間を少しでも穏やかに過ごすには、周囲の機嫌を過剰にうかがうよりも、自分がやるべきことを整理し、一定の距離感を保つことが大切です。
ここでは、実践しやすい4つのコツを紹介します。
1. 仕事の引き継ぎに集中する
退職日までにできることの一つは、担当業務の引き継ぎを着実に進めることです。
退職を伝えたあとに気まずさを感じると、周囲の視線や態度ばかりが気になってしまいがちです。しかし、意識を自分でコントロールできる業務に向けることで、気持ちを切り替えやすくなります。
引き継ぎでは、次のような情報を整理しておきましょう。
- 担当している業務と進行状況
- 今後の対応期限やスケジュール
- 関係者の連絡先や確認先
- 使用する資料やシステムの場所
- 業務上の注意点や未対応の課題
後任者が決まっている場合は、必要な情報を共有し、不明点を確認できるようにしておくと安心です。後任者が決まっていない場合でも、業務内容や対応状況を整理しておけば、引き継ぎを進めやすくなります。
ただし、すべてを完璧に仕上げようとして、過度な負担を抱える必要はありません。退職日までに対応できる範囲を上司と確認し、優先順位をつけて進めましょう。
誠実に引き継ぎを行うことは大切ですが、会社の業務をすべて自分一人で背負う必要はありません。
2. 業務以外の雑談には適度な距離感を保つ
退職を伝えたあと、ランチタイムや休憩時間の雑談が気まずく感じられることもあります。
これまでどおりに振る舞おうとして無理に会話を盛り上げたり、周囲の反応を確かめようとしたりすると、かえって疲れてしまうかもしれません。
そんなときは、挨拶や業務連絡をきちんと行いながら、雑談には無理のない範囲で参加するようにしましょう。
例えば、会話に入りづらいと感じたら、軽く挨拶をして自分の仕事に戻っても問題ありません。休憩時間を一人で過ごしたい場合も、無理に周囲に合わせる必要はありません。
一方で、気まずさを避けるために、必要な連絡まで控えてしまうのは避けたいところです。
挨拶や業務上のやり取りは丁寧に続け、プライベートな会話には深入りしすぎない。 そのくらいの距離感を意識すると、精神的な負担を減らしやすくなります。
3. 冷たい態度や嫌味を必要以上に受け止めない
退職を伝えたあと、同僚からの反応がそっけなくなったり、遠回しな嫌味を言われたりすることもあるかもしれません。
そんなとき、相手の言葉を何度も思い返して、「自分が悪かったのだろうか」「もっと違う伝え方をすればよかったのだろうか」と悩み続けると、心が休まらなくなってしまいます。
相手の感情まで、すべて引き受ける必要はありません。
例えば、嫌味を言われたとしても、仕事に関係のない内容なら無理に言い返さず、必要なやり取りだけで済ませる方法があります。
心の中で「退職日までの一時的なこと」と区切りをつけ、目の前の業務に意識を戻してみましょう。
ただし、嫌がらせや威圧的な言動が繰り返されている場合は、単に我慢してやり過ごせばよいわけではありません。発言の日時や内容を記録し、人事部門や信頼できる相談先に相談することも検討してください。
相手の機嫌を取ることより、自分の心身を守ることを優先して構いません。
4. 有給休暇を計画的に取得する
退職日までの気まずさが大きい場合、最終出社日を迎えたあとに有給休暇を取得することも、負担を減らす方法の一つです。
有給休暇を取得できれば、職場にいる時間を減らし、心身を休めたり、次の仕事や生活の準備を進めたりできます。
まずは、残っている有給休暇の日数と退職日を確認しましょう。そのうえで、引き継ぎに必要な日程を整理し、上司や人事部門に取得予定を伝えておくと調整しやすくなります。
年次有給休暇は、法律上の要件を満たす労働者に認められた権利です。退職前であっても、取得できる日数が残っているなら、遠慮しすぎずに申請を検討しましょう。
退職日を過ぎてから有給休暇を取得することはできないため、退職前に残日数や取得予定を確認しておくことが大切です。
なお、引き継ぎとの調整が必要な場合や、会社との話し合いがうまく進まない場合は、労働局などの公的な相談窓口を利用する方法もあります。
有給休暇について詳しく知りたい方は、厚生労働省の案内も参考にしてください。
参考:厚生労働省「年次有給休暇」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_yukyu.html
退職日までの行動を3つの段階に分けて整理する
退職日までの期間を漠然と過ごしていると、「まだ何かやることが残っているのではないか」と不安になりがちです。
引き継ぎ、有給消化、最終出社日の3つに分けて準備すると、やるべきことが明確になります。
引き継ぎ:担当業務と残りの仕事を整理する
まずは担当業務、進行中の案件、対応期限、関係者への連絡事項を書き出しましょう。
上司と優先順位を確認し、退職日までに対応することと、後任者へ引き継ぐことを分けておくと、必要以上に仕事を抱え込まずに済みます。
引き継ぎ資料を作成したら、必要な情報が抜けていないか確認し、後任者や上司が業務の状況を把握できるようにしておきましょう。
有給消化:残日数と取得予定を確認する
有給休暇の残日数を確認し、取得したい日程を早めに上司や人事部門へ伝えましょう。
引き継ぎに必要な日程も踏まえて調整し、最終出社日と退職日を明確にしておくと安心です。
有給休暇の取得について会社との話し合いで解決しない場合は、労働局などの公的な相談窓口への相談も検討してください。
最終出社日:必要な挨拶と確認を済ませる
最終出社日には、貸与品の返却、必要書類や手続きの確認、引き継ぎ状況の最終確認などを済ませましょう。
お世話になった人には感謝を伝えつつ、無理に全員へ長い挨拶をする必要はありません。
最終出社日までに確認しておきたい項目は、次のとおりです。
- 会社から借りているパソコン、社員証、備品などの返却
- 引き継ぎ資料や進行中の案件の共有
- 離職票など、退職後に必要となる書類の受け取り方法
- 最終給与や経費精算などの確認
- 退職後の連絡先や、必要な手続きの確認
会社や雇用形態によって必要な手続きは異なるため、自分の状況に合わせて確認してください。
落ち着いて区切りをつけ、次の生活へ進む準備をしましょう。
上司や同僚に何と言えばいい?そのまま使える会話例
退職を伝えたあとは、周囲との会話に困ることもあります。無理に詳しい事情を説明する必要はありません。短く、落ち着いて伝えることを意識しましょう。
退職理由を聞かれたとき
「今後の働き方を考えて、環境を変えることにしました。詳しいことは控えますが、自分なりに考えて決めました」
退職理由をすべての人に説明する必要はありません。話したくない内容については、差し障りのない範囲で答えて大丈夫です。
冷たい態度を取られたとき
無理に相手の機嫌を取ろうとせず、業務上必要なことを簡潔に伝えましょう。
「引き継ぎの件で確認したいことがあります。今、お時間よろしいでしょうか」
相手の態度が気になっても、仕事に必要な連絡は普段どおりに行うことが大切です。
迷惑をかけることを責められたとき
「ご負担をおかけする部分があることは理解しています。退職日までに必要な引き継ぎを進めます」
必要な配慮を示しながらも、退職することについて何度も謝り続ける必要はありません。
最終出社日に挨拶するとき
「これまでお世話になりました。皆さんに教えていただいたことを、今後にも生かしていきたいと思います。ありがとうございました」
感謝の気持ちを伝えれば十分です。無理に長い挨拶を考えたり、全員からよい反応を得ようとしたりしなくても大丈夫です。
退職を伝えたあとに引き止められた場合の対処法
退職を伝えると、「もう少し考えてほしい」「後任が決まるまで残ってほしい」と引き止められることがあります。
会社が人員配置や引き継ぎを心配している場合もありますが、退職する意思が固まっているなら、相手を納得させようとして説明を繰り返すより、自分の意思と今後の手続きを落ち着いて伝えることが大切です。
退職の意思が固まっている場合
「お話をいただきありがとうございます。ただ、退職する意思は変わりません。退職日までの引き継ぎについて相談させてください」
退職する意思が固まっていることを明確に伝え、引き継ぎなどの実務的な話へ移りましょう。
退職日の延長を求められた場合
「ご事情は理解していますが、予定している退職日を前提に、引き継ぎの進め方を相談させてください」
会社の事情に配慮することと、退職日を無条件に延長することは別です。すぐに返答できない場合は、その場で決めず、雇用契約や就業規則などを確認してから対応しましょう。
退職を認めてもらえず、話し合いが進まない場合
会社との話し合いがうまく進まない場合は、雇用契約の内容や退職の手続きについて確認し、必要に応じて労働局などの公的な相談窓口を利用してください。
退職の手続きや申し出に関する扱いは、雇用形態や契約内容などによって異なる場合があります。会社の説明だけで判断せず、必要に応じて専門の相談先に確認することが大切です。
どうしても出社がつらいときに検討したい3つの方法
周囲に気を遣いながら引き継ぎを進めても、職場の雰囲気がつらく、出社すること自体が大きな負担になる場合があります。
特に、眠れない、動悸がする、朝になると涙が出るなど、心身に不調が現れているときは、無理をして出社を続けないでください。
退職日まで耐え続けることだけが選択肢ではありません。状況に応じて、次のような方法を検討しましょう。
1. 有給休暇の取得時期を相談する
有給休暇が残っている場合は、取得予定を見直し、最終出社日を早められないか相談する方法があります。
例えば、引き継ぎを予定より早く終えられそうなら、その後の出勤日を有給休暇に充てられないか、上司や人事部門に確認してみましょう。
相談するときは、感情的な説明を無理にする必要はありません。
「引き継ぎの予定を整理したうえで、残っている有給休暇を取得したいと考えています。最終出社日について相談させてください」
このように、取得希望と業務の状況を具体的に伝えると話し合いを進めやすくなります。
有給休暇の取得について会社と合意できない場合は、労働局などの公的窓口に相談することも検討してください。
2. 心身に不調がある場合は医療機関に相談する
出社を考えるだけで強い不安が生じたり、睡眠や食事に影響が出たりしている場合は、医療機関に相談することも大切です。
医師に現在の症状や職場での状況を伝え、必要な対応について相談しましょう。
診断書が必要になるかどうか、休暇や欠勤をどのように扱うかは、症状や勤務先の制度、具体的な状況によって異なります。診断書があれば必ず休職できる、あるいは残りの期間を自動的に有給休暇に切り替えられるというわけではありません。
体調が悪いときは、退職日まで無理をして働くことよりも、健康を守ることを優先してください。
職場のストレスや心の健康について相談したい場合は、厚生労働省の「こころの耳」も参考になります。
3. 会社とのやり取りが難しい場合は退職代行も選択肢に入れる
退職の意思を伝えたあとも、会社から強く引き止められたり、連絡を取ること自体が大きな精神的負担になったりする場合は、退職代行サービスを利用する方法もあります。
退職代行サービスは、本人に代わって会社へ退職の意思を伝えるなど、退職に関する連絡を支援するサービスです。ただし、対応できる範囲は運営主体によって異なります。会社との交渉が必要な場合は、労働組合や弁護士など、適切な対応ができる運営主体かどうかを確認しましょう。
利用するかどうかは、費用やサービス内容、現在の状況を踏まえて慎重に判断することが大切です。すでに退職日が決まっており、通常のやり取りで対応できる場合には、まず有給休暇の取得や業務調整を相談する方法もあります。
一方で、自分だけでは会社とのやり取りを続けることが難しいほど追い詰められている場合は、第三者の支援を検討してもよいでしょう。
会社との連絡や退職手続きについて相談したい方は、👉円満退職ユニオン公式へ無料相談する
退職代行を利用することは、必ずしもすべての問題を解決するものではありません。しかし、会社とのやり取りが大きな負担になっているとき、選択肢の一つを知っておくことは心の余裕につながります。
まだ退職するか迷っている方へ
退職を伝えたあとに気まずい思いをしている方のなかには、「本当に辞めてよかったのだろうか」「今の仕事を続けるべきだったのでは」と悩んでいる方もいるかもしれません。
まだ退職するかどうか決めきれていない場合は、気まずさだけを理由に結論を急がず、今の職場で改善できることや、今後どのように働きたいかを整理してみましょう。
仕事のプレッシャーや上司との関係など、退職を考えるきっかけになった悩みを整理したい方は、関連する記事も参考にしてください。
退職することも、今の職場で改善を目指すことも、自分の状況に合った選択を考えることが大切です。
退職までの期間は、次の生活へ進むための準備期間
退職を伝えたあとの気まずい期間は、周囲の態度や職場の雰囲気が気になり、精神的に疲れてしまうことがあります。
しかし、周囲の人全員に理解してもらったり、最後まで好印象を保ち続けたりする必要はありません。
大切なのは、次の4つです。
- 引き継ぎを着実に進める: 担当業務や進行中の案件を整理し、退職日までにできることを明確にする。
- 周囲とは適度な距離感を保つ: 挨拶や業務連絡は丁寧に行いながら、無理に雑談を盛り上げようとしない。
- 相手の態度を必要以上に背負わない: 冷たい反応や嫌味があっても、すべてを自分の責任だと考えない。
- 自分の健康を優先する: 有給休暇や相談窓口を活用し、心身の不調がある場合は必要な支援を求める。
退職は、これからの働き方や生活を考えたうえで決めた選択です。
必要な引き継ぎと手続きを進めながら、退職日までを淡々と過ごしていけば大丈夫です。もし職場の雰囲気がつらく、心身に不調が出ているなら、一人で抱え込まず、信頼できる人や公的な相談窓口を頼ってください。
これまでの職場での役割を終えたら、次は自分自身の生活を大切にする番です。退職日までの期間を、少しでも落ち着いて過ごせるようにしていきましょう。


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